日々の出来事を記した日記帳に、遺言らしき文言があった。
細かい内容は記載できないが、要するに弟Cに財産を贈与したいのだろうかな?と推測もできる。
しかし、遺言書としての要件が抜け落ちているため、この記載でもって相続の手続は難しいと思われる。
また、母親違いの妹Eと甥H・姪Iにも口頭だが『この土地をあなたにあげる』とそれぞれに言っていた様子である。
勝手な推察だが、『一人で暮らしておられるお年寄りの寂しい気持ちなどが、たまに顔を出す親族との会話の中で“あげる≠ニいう形で出たのだろう』と思われる。その気持ちはよく分かる。しかし、これも問題の一つになった。
さらに、お亡くなりになる7、8年前に、不動産の一部売却を検討していたらしく頓挫していた話が、ここにきて持ち上がってきた。
当時、売却した場合の価額を知るものが複数おり、これも問題の一つとなった。
また、農地を所有していたが、弟C一人を除いて農業を継続する意思はない。
農地は放置しておくと当然草が生えたり場所によっては手を入れないと下部の農地に水が流れない所もあり近隣の農地の所有者から色々と意見が出てくる可能性がある。
【1】相続人全員の意見取りまとめ。
↓
【2】相続人全員と面談日時を決定。
↓
【3】遺産分割協議成立。(一部参加できない相続人がいたが、事前及び事後に同意を得た。)
↓
【4】遺産分割協議の内容に沿って手続完了。
↓
【5】ご霊前で遺産を分配。
※ 相続手続完了までの期間:約8カ月
複数の相続人に対し土地をあげる(相続させる)と伝えていた結果、多少の混乱を招いた。
相続させると言われた相続人は、自分が相続するものと思っていたのでその調整と、農地を相続した後に問題となりうる事柄についてご質問があったので事細かに様々な可能性をご説明しました。
最終的に相続人同士で意見の食い違いがあったが、日記帳の遺言らしき文言も、口頭での“あげる≠ニの言葉も考慮に入れ、最善と思われる方向性を検討した結果、結論として
(1)不動産は弟Cが相続する。
(ただし、売却を検討した不動産について、今後売却した場合は売却して得た価額を分配する。)
(2)預貯金等は各法定相続分で相続する。
との遺産分割協議が成立した。
今回の遺産分割協議は、売却を検討した不動産について、今後売却した場合は売却して得た価額を分配することを前提として話が進みました。
このように『将来売却した時は・・・』と取り決めをすると、複数の問題を抱えることになります。
問題としては
(1)売却後の分配した金銭に対する課税関係
(2)現在の相続人に相続が発生した場合
(3)売却しない限り将来に渡り義務を負う
・・・などがあります。
現状を解決するには致しかたなかったのかもしれませんが、この様な合意で終了するケースもあります。
また、農地に触れておきますが、耕作をしない人が相続したとしたら先に触れた件で近隣とこじれるケースもあり、また、今回相続した方が死亡するとその相続人が引き継ぐことになり、また同じような問題がおこります。
さらに農地は、基本的には「簡単には売れない土地」です。
農地を移転(売却)等する場合は許可等が必要で、簡単には売却等できないようになっています。
相続財産に農地がある場合は、検討する必要があります。