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相続手続に関するさまざまな事例のご紹介

遺産分割協議 事例22

 不動産の名義変更

相談者
相続人C
Aの遺産
Aの遺産
(1)不動産(土地1筆)
(2)預貯金(1500万円)
(3)現金少々
※相続税の対象外
相続人
母B、子C、子D、子Eの4名
問題点
(1)遺言書なし。
(2)母Bは高齢。
(3)子Dは不動産を均等に相続したいと主張。

このケースの問題点

遺言書がない場合は、相続人間の遺産分割協議となりますが、子Dから『不動産は均等に相続したい』との言があった。
それが相続人全員の合意であれば、その通りの手続きをせざるを得ないが、その場合主な選択肢は2つあります。
(※対象不動産は、土地1筆、約150uである。)

一つ目は、不動産を共有とし、各相続人がそれぞれ持分を持つ方法。
具体的には、持分2分の1母B、持分6分の1子C、持分6分の1子D、持分6分の1子Eとする方法。

二つ目は、不動産を4分割(分筆)し、それぞれ単独で所有する方法。
具体的には、不動産の面積を、各相続人の持分で按分して土地を分筆する方法で、母B75u、子C25u、子D25u、子E25uとなる。

しかし、この2つの選択肢には問題がある。

一つ目の選択肢は、将来その土地を売却しようとする場合、またはその土地の上に建物を新築する場合等は、全員の承諾が必要となる点です。
現在の相続人が生存中ならば、話し合いも容易にでき、合意形成も上手くできるかもしれませんが、将来この不動産の持分を持つ相続人が死亡した場合、遺言でもしない限り、死亡した相続人の相続人(通常は配偶者とその子)に相続されるため、合意形成が難しくなる可能性は否めません。
 
二つ目の選択肢は、土地の価値が低下する点です。
将来売却する必要性が生じた場合、土地を4分割したために、その土地の上に建てられる建物の大きさが制限されます。
これは、不動産の買い手がつきにくいことを意味しており、売却すらできないことになるかもしれません。
また、土地を分筆するには、土地の測量と同時に分筆の登記が必要となり、その費用もかかってきます。

このケースの解決事例

【1】遺産の調査を行う
(金融機関への紹介、不動産の図面や不動産の評価を取得する。)
 ↓
【2】遺産分割協議を行う。
 ↓
【3】不動産の名義変更の手続、預貯金の手続完了

 相続手続完了までの期間:およそ2ヶ月半

不動産を、均等に相続することについての問題を解決するため、相続人の求めに応じ、以下の助言をしました。
一つ目は、母Bが取得しようとしている相続分について、二次相続のことを考えると、子供さんが相続したほうがよいこと。
これは、高齢になった母Bもいつ何があるかわかりません。
もし母Bに何かあった時は、またその相続人が相続をすることとなり、結果、また相続登記をすることになります。
相続は順番ではないとはいえ、近い将来確実に発生します。
ですので、母Bは不動産を取得せず、子に相続させること。

二つ目は、問題点でも触れたように、土地の分割(分筆)をしないほうがよいこと。

三つ目は、不動産の相続と祭祀の承継は一体として考えること。
故人が、祭祀財産を受け継ぐ人を明確に指定しているケースは殆どありません。
そのため、核家族化、婚姻などにより故人と別居している相続人も多い現在は、祭祀財産の処置が問題となります。
また、高齢の母の面倒は誰が見るのか、家の手入れは誰が、ご近所付き合いは誰が、数年ごとの法要は誰がなど、将来に渡り負担となるようなことはいっぱいあります。
それらをきっちりと法定相続分で割り切ることなど、現実的にはできません。
そこで、不動産の相続と祭祀の承継を含む負担を一体として考えることで、問題の解決を図ることも一つの手ではないかと思います。

四つ目は、できれば誰か一人が祭祀もあわせて取得し、その子や孫に引き継いでいけるようにすること。

五つ目は、母Bがその不動産に居住しているのに、その不動産の権利を取得しないのは不安であろうから、終生その不動産に住めるような内容を合意事項として遺産分割協議書に盛り込むこと。

ポイント

今回のケースはどこにでも起こり得る相続問題ですが、権利と負担の問題解決、今後の不動産の有り様などについての助言などは、全体を見渡した上での判断が必要となるので、知識と経験が欠かせません。

今回も取りまとめをお手伝いさせていただきましたが、家族構成・財産状況などにより解決への具体的な提案は変化します。 ですので、もしお困りになられたときは是非ご相談をしてみて下さい。